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キッチンカーのリアルな現状|開業して失敗する店舗と成功する店舗の違い

公開日:2024.04.10
更新日:2024.05.30

「キッチンカー事業で失敗したくない……」
「キッチンカーを開業したいけど、廃業率が高いって本当?」

これからキッチンカーを開業したいと思っている方も多いでしょう。日本のみならず世界中を巻き込んだコロナ禍以降、飲食業界でもキッチンカーは注目を集めています。しかし、ネット上には「キッチンカーは廃業率が高い」「キッチンカーは難しい」など、ネガティブな情報ばかりでてきます。その結果、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。そこで、この記事では以下のポイントについて詳しく解説していきます。

・キッチンカー市場の現状
・キッチンカーの需要が高まる理由
・キッチンカーで失敗する店舗と成功するお店の違い


私自身、実際にキッチンカーを開業してわかったことがたくさんあります。その経験を踏まえて、キッチンカーの「リアルな現状」をお伝えしていきます。これからキッチンカーの開業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

編集者

SHUN HONKE

宮崎県初のクロッフル専門キッチンカーカフェ『kukuna cooffe』オーナー。Webマーケティング・クリエイティブ制作を中心に飲食店をサポート。趣味のキャンプを通じてコーヒーの魅力にハマる。その後、コーヒーの研究を重ね、ハンドドリップコーヒーを提供するキッチンカーカフェをOPEN。今後は、宮崎県の食文化を盛り上げることに尽力。

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    キッチンカーの廃業率の高さは過去のデータ?

    キッチンカーの廃業率は、一般的に30%と言われています。しかし、これは一般論であり、根拠のあるデータがあるわけではありません。

    中小企業庁が2022年に発表した調査結果(※1)では「宿泊業・飲食サービス業」の開業率は17%、廃業率は5.6%です。店舗ビジネスとキッチンカーでは異なる部分が多いですが、キッチンカーの廃業率も5~6%程度と考えてよいでしょう。

    そのため「キッチンカーは廃業率が高いから辞めよう……」と諦めるのは早いです。時代の流れもありますが、失敗するキッチンカーには”失敗する理由”があります。適切にキッチンカーの運営を行い、事業成功を目指しましょう。

    (※1)参照:中小企業庁|2022年版「小規模企業白書」

    キッチンカーの注目度は右肩上がり

    廃業率が高いと言われているキッチンカーですが、2020年初頭に起こったコロナ禍以降、注目度が上がっています。国土交通省の調査結果(※2)によると、平成元年よりも約8倍以上もキッチンカーが増加しており、今後も増え続ける見通しです。

    Googleトレンドで過去5年間の「キッチンカー」を調べても、右肩上がりでトレンドが上昇していることがわかります。(下図)



    また、株式会社3Aが実施した「キッチンカーの需要調査(※3)」によると、全体の91%に人がキッチンカーの利用経験があると回答しています。コロナ禍以降、3密を避け、テイクアウトできるキッチンカーが一般化してきたと考えられます。

    お客さんがキッチンカーに求めるものは、味や値段、見た目などさまざまですが、これだけははっきりいえます。「キッチンカーの需要は高く、出店場所やメニューを工夫すれば売れる」

    (※2)参照:国土交通省|令和2年版「土地白書」
    (※3)参照:株式会社3A|キッチンカー需要に関するアンケート調査結果

    キッチンカーの需要が高まり続けるおもな理由

    キッチンカーの需要が高まり続ける理由は、コロナ禍による一般化だけではありません。考えられる理由は、おもに以下の2つです。

    ・買い物難民対策
    ・災害時の食品提供


    聞き慣れない言葉もあると思いますので、詳しく解説していきます。

    買い物難民対策

    日本の少子高齢化はどんどん進行しています。2004年には1億2626万人いた人口も、2022年には404万人減少の1億2222万人になりました。とくに、2022年は前年から66万人が減少しており、日本の人口減少は加速し続けています。

    そんな中、深刻とされているのが「高齢化」です。2004年の65歳以上の高齢層2821万人に対し、2022年には804万人増加の3625万人になっています。今後も日本人の高齢化は進行を続け、高齢化国家になることが予想されます。

    高齢化国家になると、問題になるのが「買い物難民(食料品アクセス困難者)」の増加。農林水産省が定める買い物難民とは、地方の過疎化やバス・電車など公共交通機関の撤退、大型スーパーの郊外進出などによって、食料品の購入や外食が困難になっている人たちのことです。中には、自動車に乗れない高齢者(免許返納含む)も多くいます。

    買い物難民は、2010年は全国で382万人程度でしたが、高齢化の影響もあり2025年には598万人まで増加すると予想されています。こうした日本の背景もあり、自由に移動できるキッチンカーが注目を集めています。キッチンカーであれば、過疎化した地域やスーパー・飲食店が少ない地域に向かい、買い物難民の方々へ食べ物を提供できます。

    高齢化が進み、買い物難民が増加する日本において、キッチンカーは今後も需要が高まり続ける業態といえるでしょう。

    (※)参照:一般社団法人中小企業診断協会|令和4年度「調査・研究事業」キッチンカー(移動販売車)の開業・運営支援マニュアル報告書

    災害時の食品提供

    キッチンカー最大の魅力は、災害時に現場におもむき、食料提供や炊き出しを行えることです。阪神淡路大震災や東日本大震災、熊本大地震など、日本は地震や津波など災害の多い国です。2024年に入ってすぐにも、能登半島地震が石川県を襲い、多くの被害をもたらしました。

    被災地では、水道や電気などのライフラインから、食料品も十分に確保できない日が続きます。そんな中、東日本大震災では、日清食品グループが被災地へカップ麺を無償提供し話題を呼びました。ほかにも、牛丼チェーン店のすき家も、被災地で炊き出しを行い、その後は厨房設備を備えたキッチンカーを制作しています。

    人間が生きるためには「食」が必要です。キッチンカーは、こうした被災地に出向き、多くの被災者に食料を届けられる貴重な存在といえます。

    (※)参照:一般社団法人中小企業診断協会|令和4年度「調査・研究事業」キッチンカー(移動販売車)の開業・運営支援マニュアル報告書

    キッチンカー開業は失敗しやすいといわれる3つの理由

    キッチンカー開業は失敗しやすいと言われていますが、その理由はキッチンカーならではの難しさにあります。私もキッチンカーならではの制限に日々悩まされています。

    しかし、それはほかのキッチンカーも同じこと。キッチンカーの特性から、できること・できないことをしっかり理解することで、それに応じた対策を立てることができます。キッチンカー開業に失敗する人は、キッチンカーの特性を理解せず、何も対策を立てなかった人たち。まずは、キッチンカーの特性を理解しましょう。

    キッチンカーが難しいと言われるおもな理由は、以下の3つです。

    1. 店内オペレーションの整備が難しい
    2. 回転率の改善が難しい
    3. 提供できるメニューに制限がある


    1. 店内オペレーションの整備が難しい

    店舗と違い、キッチンカーは店内オペレーションの整備が難しいものです。店舗との大きな違いは、以下のとおりです。

    店舗型飲食店キッチンカー
    ・調理器具、設備が充実している
    ・ホール、キッチンなど、分担して作業ができるスペースがある
    ・調理設備が不十分
    ・作業スペースが狭く、1~2人の少人数で営業するのが基本

    キッチンカーは準備できる調理器具や設備が完璧ではないため、できることが限られてしまいます。また、軽トラックやワーゲンバスなどの場合は作業スペースが狭く、1オペレーションが基本となります。そのため、オーダー・お会計・調理・提供・片付けなどをすべて1人で回す必要があり、オペレーション整備がとても大変です。

    私も「店舗型だったらできたのになぁ……」と思ったことが数多くあります。しかし、それもまたキッチンカーの魅力でもあります。キッチンカーを開業する際は、1人でも回せることを想定してオペレーションを整えましょう。

    2. 回転率の改善が難しい

    キッチンカーは回転率(提供スピード)が命です。店舗型の飲食店は席について待てますが、キッチンカーは外で立って待つことがほとんど。とくに、夏の暑い時期は立っているだけでも汗が出てきてしまいます。

    株式会社3Aの「キッチンカー需要調査(※1)」によると、キッチンカーに求めるもので「並ばずすぐに買える」と回答したユーザーが12%もいました。キッチンカーでは、提供スピードが顧客満足度を左右します。なるべく、お客さんを待たせないように、盛り付けの工程や仕込み作業などを検討しましょう。

    (※1)参照:株式会社3A|キッチンカー需要に関するアンケート調査結果

    3. 提供できるメニューに制限がある

    キッチンカーは、食材を保管できる場所が限られているため、おのずと提供メニューにも制限があります。店舗型飲食店のように、在庫を倉庫や物置に置くことができず、すべてキッチンカー内で完結させなければいけません。とくに、車両サイズによっては設置できる冷蔵庫や冷凍庫が小さくなってしまう場合もあります。

    また、キッチンカーは走行中や夜などは電気が使えなくなるため、営業中以外は自宅やオフィスの冷蔵庫に保管する必要があります。毎日繰り返していると、意外と面倒で重労働です。

    これらの食材を保管できる場所や、衛生面にも気を配って提供するメニューを考える必要があります。

    【例】キッチンカーで失敗する店舗と成功するお店の違い

    キッチンカーで失敗する店舗と成功する店舗は何が違うのか。それぞれに共通点があるため、詳しく紹介していきます。これからキッチンカーを始める方は、参考にしてみてください。

    提供メニューの違い

    キッチンカーの提供メニューについて、失敗と成功例を紹介します。

    失敗例成功例
    戦略・定番メニューがほとんど
    ・期間限定やイベント限定メニューなどはない
    ・ほかのキッチンカーとは違い珍しいメニューを提供
    ・期間限定やイベント限定メニューを提供
    結果・同じメニューを提供するキッチンカーがあるのでイベントなどに呼ばれにくい
    ・限定メニューがないので代り映えせず、リピート客が増えない
    ・ほかのキッチンカーとの差別化が図れるため、イベントに呼ばれ売上が伸びる
    ・限定メニューを定期的に出すことで、常に新しい楽しさを味わえる

    キッチンカーにおいて、クレープや唐揚げ、アイスなどの定番メニューは売上が伸びやすい傾向にあります。しかし、定番メニューだけでは差別化を図れず、イベント出店や売上につながらないケースも考えられます。

    キッチンカーで成功するためには、市場調査・競合調査を行ったうえで、珍しい(新しい)メニューを提供するのがベストです。もし、定番メニューを提供する場合でも、ただの唐揚げではなく「○○産の塩を使った塩唐揚げ」など、少し特別感を出すと効果的です。

    出店場所の違い

    キッチンカーの出店場所について、失敗と成功例を紹介します。

    失敗例成功例
    戦略・毎日決まった場所に出店している
    ・新しい出店場所を探していない
    ・曜日ごとで出店場所を変えている
    ・常に新しい出店場所を探している
    結果・毎日同じ場所に出店しているため飽きられ、売上がどんどん低下・状況に応じて出店場所を変えているため、地域ごとでの認知度が向上し、お客さんが増加
    ・常に新しい出店場所を探しているためマンネリ化せず、売上も低下しない

    キッチンカーは出店場所で売上が決まると言っても過言ではありません。そのため、毎日同じ場所に出店していると、どうしてもマンネリ化し、お客さんから飽きられてしまいます。そもそも、いろいろな場所に移動できるのがキッチンカー(移動販売車)の魅力なのに、毎日同じ場所では持ち味を生かせません。

    とはいえ、出店場所を探すのは労力を使うし大変ですよね。地元のつながりがあるならいいのですが、ない場合は直談判するしかありません。私も「断られたら嫌だな……」と思いながらいつも電話しています。

    キッチンカーにおいて、出店場所の確保がもっとも難関で重要なポイントです。面倒で怖いかもしれませんが、成功させるためには常に新しい出店場所を探すことをおすすめします。

    ▶関連記事:【体験談】キッチンカーの売上は出店場所で決まる!探し方やおすすめの場所

    客単価の違い

    キッチンカーの客単価について、失敗と成功例を紹介します。

    失敗例成功例
    戦略・売れなくなることを恐れ値上げしない
    ・オペレーションが複雑になるのでトッピングはなし
    ・お客さんの年齢層などにあわせてトッピングメニューを充実させる
    ・客単価を上げるため、セットメニューを作る
    結果客単価が低く売上が伸びないトッピングやセットメニューを充実させることで客単価が上昇し、売上も伸びた

    キッチンカーの売上は「客数×客単価」で決まります。客単価は売上に直結するため、高く設定するに越したことはありません。しかし、値段を上げ過ぎると購入者(客数)は減ってしまいます。

    そのため、商品価格は据え置きで”客単価のみ”上げる工夫が必要です。たとえば、トッピング類の充実やセットメニューの作成、まとめ買いキャンペーンなど。工夫次第で客単価は上がります。

    トッピング類などを充実させる場合は、オペレーションが複雑にならないように工夫を施しましょう。

    店内オペレーションの違い

    キッチンカーの店内オペレーションについて、失敗と成功例を紹介します。

    失敗例成功例
    戦略・値段がバラバラ
    ・トッピングはいくつでも可能
    ・忙しい日でも1オペレーション
    ・カテゴライズしたメニューごとに均一価格
    ・トッピングは2つまで
    ・土日などの忙しいことが予想される日は2人以上で営業
    結果・値段がバラバラでわかりづらく顧客満足度も低下
    ・提供スピードが遅くなりお客さん離れが進行
    ・値段がわかりやすいので安心して注文できる
    ・提供スピードが早く、顧客満足度が向上

    店内オペレーションが複雑だと、提供スピードも遅くなりお客さんを長時間待たせてしまう可能性があります。キッチンカーにおいて、提供スピードは顧客満足度に大きく影響します。店内オペレーションを整備して、提供スピードを心がけましょう。

    また、メニューの値段がバラバラだと注文しにくいというデメリットがあります。注文に時間がかからないように、メニューをカテゴライズして、なるべく均一価格にしましょう。

    マーケティング施策の違い

    キッチンカーのマーケティングについて、失敗と成功例を紹介します。

    失敗例成功例
    戦略・時代の流れを嫌いSNSはやらない
    ・一度味を知ってもらえれば人気が出ると思っている
    ・SNSを積極的に活用している
    ・イベント告知用のチラシを作りビラ配りをしている
    ・HPで情報発信している
    結果・出店場所によって満足のいく集客ができない
    ・認知度が広まらない
    ・人の少ない出店場所でも集客できる
    ・SNSで口コミが広がり人気になる

    「味が美味しければ成功する」と思っている方も多いでしょう。しかし、キッチンカーを成功させるためにはある程度のマーケティングが必要です。どれだけ美味しい料理も知られなければ意味がありません。

    キッチンカーを開業する際は”まずは知ってもらう”ことを意識してマーケティングを行いましょう。認知度を上げる方法としてもっとも手軽なのがSNSの活用です。近年では、InstagramやTikTokなど、さまざまなSNSを使って集客できます。SNSごとには特徴があるため、目的に応じて使い分けることが最大のポイントです。

    ▶関連記事:SNSより大事?成功するキッチンカーの集客方法|効果的な5つの施策

    キッチンカーの外装・装飾の違い

    キッチンカーの外装・装飾について、失敗と成功例を紹介します。

    失敗例成功例
    戦略・タペストリーや看板は準備しない
    ・イベント時も普段と変わりなし
    ・タペストリーや看板を立て、何を売っているお店なのか遠くからでもわかるようにする
    ・イベント時は普段よりも豪華な装飾を施す
    結果何を売っているお店なのかわからず、お客さんが来ない見た目のインパクトもあり、多くのお客さんが来店し売上が伸びた

    キッチンカーは「走る広告塔」です。街中を走っていても、ピンク色や黄色など派手なボディカラーをしていると目立ちますよね。マーケティングの項目でもお伝えしましたが、キッチンカーでは何より知ってもらうことが重要です。そのため、外装や装飾を施し、遠くからでも何を売っているお店なのかわかるようにしましょう。

    しかし、何も派手にする必要はありません。お店のコンセプトに合わせて白や黒などの落ち着いた色合いでも問題ありません。重要なのは、コンセプト(世界観)や売っているメニューが一目でわかるかどうかです。キッチンカーに塗装や装飾を施す際は、よく考えてから実施することをおすすめします。

    まとめ

    キッチンカーの廃業率は30%と言われていますが、これは信憑性のある根拠がなく過去の情報といえます。そのため、そこまで心配する必要はないのですが、運営の仕方を間違えると失敗することに変わりありません。

    また、高齢化社会による「買い物難民の増加」「災害時の食品提供」などの観点から、今後もキッチンカーの需要が高まり続けることが予想されます。

    キッチンカーを開業する際は、店舗型飲食店との違いをしっかり理解することが重要です。とくに注意したいのは、以下の3つ。

    1. 店内オペレーションの整備が難しい
    2. 回転率の改善が難しい
    3. 提供できるメニューに制限がある


    失敗するキッチンカーには必ず理由があります。提供メニュー・出店場所・店内オペレーションなど、できる限りの準備をして挑むようにしましょう。キッチンカーの集客やデザイン制作など、もしお困りでしたらお気軽にご相談ください。