キッチンカーの値段はピンキリ?開業前に知っておきたい車種別相場
新型コロナの影響で、2020年以降の飲食店ではテイクアウトの需要が強まりました。通常の営業形態からテイクアウト専門店に路線変更する飲食店も多い中、脚光を浴びたのが「キッチンカー」
移動販売なので「固定客が定着しづらい」「準備できる在庫数が限られる」などのデメリットはありますが、三密を避けながら手軽に飲食店を開業できるのは大きな魅力といえます。実際に、国土交通省の調査結果(※1)によると、平成元年と比べて約8倍も増加していることがわかります。
テイクアウトの需要が増える中、これからキッチンカー事業を始めたいと考えている方も多いでしょう。しかし、キッチンカーの値段がわからないことには話が進みません。そこで、この記事では以下のポイントについて解説していきます。
・キッチンカーの入手方法
・車両別でのキッチンカー値段相場
・キッチンカーに適した車種
・車両以外に必要な諸経費
当たり前ですが、キッチンカー事業を始めるには商売道具となるキッチンカーが必要です。私自身、今年からキッチンカー事業を始めました。その経験を踏まえて解説していくので、キッチンカー事業に興味がある方は参考にしてみてください。
(※1)参照:国土交通省|令和2年版「土地白書」
編集者
SHUN HONKE
宮崎県初のクロッフル専門キッチンカーカフェ『kukuna cooffe』オーナー。Webマーケティング・クリエイティブ制作を中心に飲食店をサポート。趣味のキャンプを通じてコーヒーの魅力にハマる。その後、コーヒーの研究を重ね、ハンドドリップコーヒーを提供するキッチンカーカフェをOPEN。今後は、宮崎県の食文化を盛り上げることに尽力。
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キッチンカーの入手方法は3パターン
キッチンカーを入手する方法は、大きく以下の3パターンです。
・自分でDIY・改造する
・制作会社に依頼する
・レンタル・リースする
それぞれのメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
入手方法 | 値段の安さ | 大変なところ | おすすめの人 |
DIY・改造 | △ | ・車や保健所の審査基準などに詳しくないと難しい ・ベースとなる車両を入手する必要がある | ・普段から車のDIYを行っている人 ・キッチンカーの制作費用を安くしたい人 |
制作会社に依頼 | ✕ | ・納車まで時間がかかる ・自分に合った良い制作会社を選ぶ必要がある | ・キッチンカー初心者の人 ・車のDIYに自信がない人 |
レンタル・リース | ○ | ・使用頻度が上がるほど割高になる ・理想とするキッチンカーをレンタルできるとは限らない | ・まだキッチンカーを本格的に始めるか迷っている人 ・イベントのみ出店予定の人 |
キッチンカー事業において、もっともお金がかかるのは車両代(キッチンカー代)です。準備できる予算にあわせて、入手方法を検討してみてください。
自分でDIY・改造する
キッチンカーを入手する方法として、DIYや改造があります。DIYであれば、すでに所有している車両や中古車などを使うため、制作会社に依頼するよりも値段が安くなります。また、自分好みのキッチンカーに仕上げることができるのも大きなメリットといえます。
ただし、キッチンカーは保健所の審査に通らなければ営業許可をもらえません。自分でDIYや改造してキッチンカーを作る場合は、車の構造や保健所の審査基準などを確認してから行うようにしましょう。
制作会社に依頼する
制作会社に依頼する方法の中でも、全部依頼するパターンと箱(荷台の調理スペース)のみを依頼するパターンの2つがあります。全部の制作を依頼する場合、おおよそ100万円以上かかりますが、新車と中古車でも値段は大きく異なります。新車と中古車の値段相場については、後ほど詳しく解説します。
一般的には、制作会社に丸投げするケースが多いですが、中には箱だけの依頼を検討している方もいるでしょう。箱だけの依頼の場合は、個人の制作者で20~30万円、法人制作で50万円以上が相場です。最近では、キッチンカー制作を専門としている個人の方も多く、初期費用を安くしたい方におすすめです。SNSなどで「エリア名 キッチンカー制作」などで調べると出てくるので、一度調べてみてください。営業エリアによっては、信頼できる個人の方がいない場合もあるので、その場合は法人(制作会社)を探しましょう。
レンタル・リースする
近年では、キッチンカーを購入するのではなく「レンタルやリース」などの手法が流行っています。キッチンカーをレンタル・リースする最大のメリットは”初期費用を抑えられる”こと。このあと詳しく紹介しますが、キッチンカーの購入には200万円以上必要なケースがほとんどです。しかし、レンタルやリースであれば、月20万円程度でキッチンカーを入手できます。
レンタル会社によっては、月単位ではなく日単位で行っていることもあり、
・まだ本格的にキッチンカーを開業するか迷っている方
・イベントのみ出店したい方
などにおすすめの方法といえます。ただし、レンタル・リースを検討している場合は、その後の展開を早めに決断することをおすすめします。キッチンカーを購入する場合とレンタルする場合の月単位での想定費用は、以下のとおりです。
【キッチンカー購入の場合】
●想定期間:2年
250万円÷12か月×2年=10万4167円 / 月
【キッチンカーレンタル・リースの場合】
20万円 / 月
上記のように、250万円のキッチンカーを購入して2年間活動する場合、月あたりの費用は約10万円です。対してキッチンカーのレンタル・リースは月20万円程度かかるので、期間が長くなるほど割高になることがわかります。キッチンカーの値段にもよりますが、レンタル・リースを始める場合は、早めにその後の展開を決めるようにしましょう。
【新車・中古車】ベース車両別キッチンカーの値段相場
キッチンカーを購入する場合、ベース車両を新車か中古車か迷いますよね。それぞれの値段相場とメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
ベース車両 | 値段相場 | メリット | デメリット |
新車 | 250~600万円 | ・自分の理想とするキッチンカーに仕上がる ・まっさらな状態でキッチンカーを始められる | ・値段が高くなる ・キッチンカーの設備や外観を明確にする必要がある |
中古車 | 50~500万円 | ・新車に比べると値段が安くなる | ・良い中古車を探す必要がある |
車種にもよりますが、新車の場合は250~600万円程度、中古車の場合は50~500万円程度が相場です。車種別(大きさ別)の値段相場は、このあと詳しく紹介します。新車と中古車のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
1. 新車キッチンカーのメリット・デメリット
新車の大きなメリットは、一から自分の理想とするキッチンカーを作れることです。キッチンカー開業を夢に見ていた方にとっては、これほどうれしいことはないでしょう。
その反面、中古車に比べると値段が高くなります。また、理想とするキッチンカー像を明確にしておかないと、制作会社にイメージを伝えることができません。そのため、新車のキッチンカーを購入する場合は
・売る商品(メニュー)
・外観の塗装
・お店の雰囲気
・必要な設備(冷蔵庫など)
を事前に決めておきましょう。キッチンカーのイメージは、すでに活動しているキッチンカーを探すと早くてわかりやすいです。たとえば、SNSで「エリア名 キッチンカー」などで調べると、さまざまなキッチンカーが表示されるので参考にするとよいでしょう。
2. 中古車キッチンカーのメリット・デメリット
中古車のメリットは、新車と比べて値段が安くなることです。ベースとなる中古車によりますが、安い軽トラックを探せば、かなり初期費用の節約になります。私の経験上、走行距離が少なければ車両の劣化もほとんどないので、中古車でも問題なく活動できます。中古車でも全塗装すれば新車同様キレイな仕上がりになるので、初期費用を安くしたいと考えている方におすすめです。
ただし、ベースとなる中古車が見つからなければキッチンカーを作ることができません。制作会社によっては、中古車の入手から手伝ってくれることもあるので、一度相談してみましょう。もちろん、オークションなどで入手しても問題ありません。
【徹底比較】キッチンカーの開業に適した4車種
キッチンカーの開業に適した、いわゆる営業しやすい車種は以下の4種類です。
車種 | 値段相場 | 適したメニュー |
軽トラック | (新車)250~350万円 (中古車)50~300万円 | ・スイーツ系 ・ドリンク系 ・パン、ホットドッグ など |
1tトラック | (新車)300~600万円 (中古車)100~500万円 | ・クレープ ・たこ焼き、お好み焼きなどの鉄板系 ・おでん など |
1.5tトラック | (新車)350~600万円 (中古車)200~550万円 | ・焼き物、揚げ物 ・カレー ・ステーキ丼 など |
ワーゲンバス | (新車)生産終了 (中古車)250~1,000万円 | ・クレープ ・カフェメニュー ・軽食 など |
ベースとなる車種によって初期費用や適したメニューが異なります。まずは、提供するメニューを決めてから車種を検討しましょう。ここでは、車種別での特徴を詳しく紹介します。
1. 軽トラック
軽トラック最大の特徴は、値段が安く小回りが利くことです。私もそうでしたが、キッチンカーを始めて最初の障壁は「出店場所の確保」その点、軽トラックは駐車場や人通りの多い場所でも出店できるため、出店場所に困ることがありません。それでも、出店場所探しは大変ですが、キッチンカー初心者の方にはおすすめのタイプです。
また、値段も安く、新車で250~350万円、中古車で50~300万円程度です。塗装の種類や備える設備によって変動しますが、新規事業の中では手を出しやすい金額といえるでしょう。
私も1台目は軽トラックタイプのキッチンカーにしましたが、印象としては「かなり狭い」です。業務用の冷蔵庫を置いて、必要な水タンクを設置するとほとんどスペースがありません。大人2人で作業するには狭すぎるので、ワンオペレーション(※)を想定している方におすすめです。
(※)1人でお店を回すこと
2. 1tトラック
1tトラックの大きさになると、作業スペースも広がり、車内での仕込み作業もしやすくなります。そのため、フルーツや食材を多く使用するクレープや鉄板メニューなどに向いています。
また、軽トラックに比べて販売窓が大きくなるため、お客さんとコミュニケーションが取りやすいのも大きな特徴です。値段は新車で300~600万円、中古車で100~500万円程度です。「車内を広々使いたい」「2人でお店を回したい」と考えているは、1tトラックを検討しましょう。
3. 1.5tトラック
1tトラックよりもさらに大きい1.5tトラック。作業スペースの広さから、スタッフの数を増やし回転率を上げることで売上アップにもつながります。また、より多くの食材を保管できるため、メニュー数や提供数を増やせることも魅力のひとつでしょう。
ただし、車両が大きいため出店できる場所は限られてしまいます。すでに出店場所の目星がついている場合は問題ありませんが、いきなり1.5tトラックからスタートすることはおすすめしません。まずは、軽トラックや1tトラックで実績を作ってから、様子を見て1.5tトラックに切り替えましょう。
4. ワーゲンバス
かわいらしいビジュアルから「キッチンカーはワーゲンバスでやりたい」という方も多いのではないでしょうか。ワーゲンバスは、フォルクスワーゲンのトランスポーターという車種のこと。1950年の初代T1(タイプ1)から始まり、現在はT6(タイプ6)まで発売されています。ただし、一般的に思い浮かべるレトロ感の強いワーゲンバスは、T1とT2のことで、T3以降はワーゲンバスとはいわれません。
日本でも人気の高いワーゲンバスですが、設計が古く環境規制に対応できないことなどが理由で、1975年にT1、2013年にT2が販売終了しています。そのため、現在ではワーゲンバスを新車で購入することはできず、中古車を探すしかありません。人気車種でもあるため、中古車でも値段が高く、安くても250万円、高いものは1,000万円近くになります。
それでも、ワーゲンバスでのキッチンカーを諦められない方もいるでしょう。あの外観のキッチンカーを一度目にすると、諦めきれない気持ちもわかります。ワーゲンバスでキッチンカーを始める手段は2パターンあります。
1. キッチンカー使用のワーゲンバスを中古で購入する
2. 中古のワーゲンバスを購入してキッチンカー仕様に改造する
それぞれのメリット・デメリット、そして値段相場は以下のとおりです。
手段 | メリット | デメリット | 値段相場 |
キッチンカー仕様のワーゲンバスを中古で購入する | 内装を少し変えるだけなので、営業開始までが早い | ・そもそも該当車両の数が少ない ・自分の理想とする内装、レイアウトではない可能性が高い ・保健所の基準に基づいて多少の改造が必要 | 350~1,000万円 |
中古のワーゲンバスを購入してキッチンカー仕様に改造する | 自分で理想のキッチンカーに仕上げることができる | ・自分で改造する手間がかかる ・保健所の基準を事前に調べておく必要がある | 250~900万円 |
どちらの方法でも問題ありませんが、キッチンカー仕様のワーゲンバスはほとんど市場に出回っておりません。タイミングよく見つけても、理想とするレイアウトではない可能性が高いでしょう。そのため、中古のワーゲンバスを探して、自分でキッチンカー仕様に改造するのが一番早い方法です。たまに掘り出し物が市場に出回ることもあるので、根気強く探し続けましょう。
車両だけじゃない!キッチンカー事業で必要な諸経費
キッチンカー事業を始めるなら知っておきたいことがあります。それは、車両以外にもさまざまな経費がかかることです。駐車場代やガソリン代、車検代などはもちろんですが、忘れてはいけないのが「保険」です。キッチンカー事業で加入すべき保険は、以下の2つ。
・車両保険
・生産物賠償責任保険(PL保険)
保険の加入は必須ではありませんが、何かあった時のために加入しておくことをおすすめします。また、中には生産物賠償責任保険(PL保険)の加入が必須条件の出店場所もあります。出店場所の確保やもしもの際に備えて、上記2つの保険は加入しておきましょう。
車両保険
キッチンカーは運転する機会も多く、万が一に備えて車両保険の加入が欠かせません。ただし、キッチンカーは8ナンバー(特殊用途自動車)に区分されるため、通常の自動車のようにダイレクト型保険での加入ができないので注意が必要です。つまり、ソニー損保さんやチューリッヒさんなどでは加入できないということです。
そのため、三井住友海上さんなどの代理店に依頼することになります。私は株式会社シェアティブさんに依頼し、この後紹介する生産物賠償責任保険(PL保険)も同時に加入しております。保険会社(代理店)はどこでも問題ありませんが、加入できる保険会社が限られてしまうので、よければ参考にしてみてください。
キッチンカーの車両保険は、通常の自動車保険よりも少し高い印象で、年間10~15万円前後です。車種によってはもう少し高くなる可能性があるので注意しましょう。
生産物賠償責任保険(PL保険)
生産物賠償責任保険(通称PL保険)は、提供したメニューや作業中に他人をケガさせた場合などに補償される保険のことです。補償の対象となるケースは、以下のとおりです。
1. 製造・販売した製品や商品(生産物)
2. 仕事の終了後、行った仕事の結果
キッチンカーでは看板やタペストリー、のぼりなどを設置することが多いです。そのため、強風で看板が倒れて、通行者にケガを負わせてしまう可能性も十分に考えられます。外で営業するキッチンカーは何が起こるかわからないので、PL保険の加入は忘れずに行いましょう。
PL保険は、車両保険と同じ保険会社に依頼しても問題ありませんが、日本食品衛生協会の「あんしんフード君・スーパーあんしんフード君」に加入する方法もあります。保健所の審査通過時に案内されると思いますので、お好きなほうで加入してください。
まとめ
キッチンカーを入手する方法は以下の3つで、それぞれのメリット・デメリットを表にまとめました。
・自分でDIY・改造する
・制作会社に依頼する
・レンタル・リースする
入手方法 | 値段の安さ | 大変なところ | おすすめの人 |
DIY・改造 | △ | ・車や保健所の審査基準などに詳しくないと難しい ・ベースとなる車両を入手する必要がある | ・普段から車のDIYを行っている人 ・キッチンカーの制作費用を安くしたい人 |
制作会社に依頼 | ✕ | ・納車まで時間がかかる ・自分に合った良い制作会社を選ぶ必要がある | ・キッチンカー初心者の人 ・車のDIYに自信がない人 |
レンタル・リース | ○ | ・使用頻度が上がるほど割高になる ・理想とするキッチンカーをレンタルできるとは限らない | ・まだキッチンカーを本格的に始めるか迷っている人 ・イベントのみ出店予定の人 |
キッチンカーの値段は新車と中古車で異なり、その中でも軽トラックや1tトラックなど、ベースとなる車種によっても変わってきます。それぞれの値段相場は以下のとおりです。
車種 | 新車 | 中古車 |
軽トラック | 250~350万円 | 50~300万円 |
1tトラック | 300~600万円 | 100~500万円 |
1.5tトラック | 350~600万円 | 200~550万円 |
ワーゲンバス | 生産終了 | 250~1,000万円 |
キッチンカーの値段は、塗装の種類や設置する設備によっても変動するので、必ず見積もりを取って確認するようにしましょう。
また、キッチンカー事業は、車両以外にも必要な経費があります。駐車場代やガソリン代もそのひとつですが、重要なのは「車両保険」と「生産物賠償責任保険(PL保険)」です。車両保険は必須ではありませんが、キッチンカーは運転頻度が高くなるため万が一に備えて加入することをおすすめします。出店場所によっては、PL保険の加入が必須のところもあるので、こちらも加入することをおすすめします。相場は、車両保険が10~15万円前後、PL保険が年間1万円程度です。
店舗とは違って、キッチンカーは数百万円台から始められる事業のひとつです。メニュー決めや車両のレイアウトなど、やることは多いですが、その分楽しさもあります。キッチンカー事業を始めようと悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。